- 取材
- 2015. 09. 18
【西岡卓志 × 千葉智之(HOT PEPPER Beauty Academy アカデミー長)】サロン経営で勝ち続ける為に必要な事?(後編)
前編/後編による全2回でお届け致します。
前編はこちらから。
編集部:
前編では、人の価値を高めていく事が大切だとの事ですが、オーナーはどういった事を意識する必要がありますか?
千葉智之(以下、千葉):
考え方でよく言われることに「顧客満足(CS)」と「従業員満足(ES)」というのがあります。
サロン経営においては「顧客満足」ももちろん大切ですが、まずは「従業員満足」だと考えています。
まず、サロンはお客様がリピートしてくれないと経営が安定しません。
リピートしてもらう為には「顧客満足」を上げないといけない。
「顧客満足」を上げる為には「商品の価値」を上げないといけない。
サロンにとって商品というのは「人」なので、「人の価値」を上げなければいけない。
「人の価値」を上げる為には、従業員の満足を上げないといけないという繋がりです。
その方法としては大きく二つだと思っています。
一つは、労働環境を良くすること。
給料を上げるとか、勤務時間を適正化するとか。
しかしこれには「お金」がかかるので徐々に良くしていくしかない。
もう一つは、マネジメント。その人のやる気を出させ、成長を感じてもらう事。
今いる人を辞めさせない、定着させてやる気にさせる、そしてキャリアアップをしてもらう。
これが、サロンの好循環を生むベースになる。
この二つを、オーナーさんが本質的に理解している事が大切だと考えます。
編集部:
なるほど。西岡さんはご自身のサロン「ROULAND」を、1年前にオープンされましたが、その辺りは意識されていましたか?
西岡卓志(以下、西岡):
はい、すごく意識してますね。
例えば労働環境に関してでは、ロイヤリティ(※ここでは臨時の報酬)を凄く出してます。
なるべくスタッフに多く還元できるように意識していて、何かにつけて給料を増やす 笑
例えば、Blogで1万PVいったら1千円渡すとか。
Blogを書く事って、サロンにとってはプロモーション施策じゃないですか?だけど、多くのサロンがBlogを書く事の労働対価を報酬に変えていない。
指標がはっきり出るわけなので、報酬も出しやすいと思います。
千葉:
なるほど、面白いですね!
しかし、言ってる事とやってる事を、仕組みも含めて一気通貫で揃えるのは、言うほど簡単な事ではないと思います。
「Blogも書こうよ!」とは言うけど、書いて結果が出たら報酬を出すという所まで出来ないサロンが多いと思います。
西岡さんはそういった仕組み化が上手いと思うのですが、何かポイントはありますか?
西岡:
仕組み化という事とは少し違うかもしれませんが、やりたい人がいるかどうかだと思います。
「お客様にそういった事で喜んでもらいたい」「お客様の為に何かしたい」と思えるかどうか。
千葉:
なるほど。やらされているのではなく、自分からお客様の事を考えて動けるかどうかですね。
ちなみにアフロートの場合は、そういったマインドの所はどうやって教育しているのですか?
西岡:
理念ですかね。
「僕らは何のためにやっているのか」をスタッフに伝え続ける。ミッションカードを常に携帯する。
美容室は「理念教育」がすごく大切。
千葉さんもおっしゃっていたように、サロンは「人」なので、「何のために僕らはやっているのか」を常に考えないといけないと思う。
なので、「これはやっちゃダメ!」と頭ごなしに否定はしません。
「なんでこれをしたの?」と聞く。
お客様の為にしたのか?理由がないのか?
「理由がない事は、やっちゃダメだよね」と伝えている。
例えば「スチームをあてる時間は、なぜ5分なのか?」とか、全ての行動に理由がある事が大切だと考えます。
また、その理由をお客様に説明しながら行うことも、サービスの価値の向上になると思います。
千葉:
なるほど、理念はとても大切ですよね。
しかし、「理念は作ったはいいけど浸透しない」という悩みを、頻繁にオーナーさんから伺います。
浸透させる為に、どういった取り組みをされていますか?
西岡:
一つは、指導をする時に、理念をもとに指導するように徹底しています。
失敗を是正する時も「それは世界一の美容師集団がすることなのかな?」って言いますね。
もう一つは、言い続ける、やり続ける。
西岡:
少し話がそれるのですが、マネジメントには「母性」が大事だと思っているんです。
父性とは一喝して何も言わない、母性は「もう歯磨きしたの?」「歯ブラシはちゃんと戻して」とか毎日言うのが母性だと思っていて 笑
だからマネジメントには「母性」が大切だと思っています。
千葉:
今はそうかもしれないですね。
リクルートの子育てをしている女性マネージャーからも「子育てとマネジメントって似てる部分がある」って聞くことがあります。
西岡:
僕は技術は「父性」でいいと思ってるんです。
教えたからといって出来るものではない。「とにかくやれ!体で覚えろ!」と。
自分でやりながら考えていって、出てくるモノが個性だと思う。
同じことができなくても良い。
マネジメントに関して言うと、同じことができないとダメなので
そうなってくると「母性」なのかと思う。
なので、女性の幹部って必要になってくるかもしれないですね。
編集部:
女性が美容師としてのキャリアを描くのは難しいんでしょうか?
西岡:
ポジションを作ってあげれば問題ないと思います。
女性の美容師さんは「出産までに、美容師としてのキャリアを形成し、復帰を待ってくれるお客様がいる状態にしないといけない」と思っている人が多いんです。
もちろん、お客様がいた方が良いのですが、「スタッフの教育」や「母親ならではの視点」で提案できる価値もあるので、その辺は気にしなくてもいいのかなって思います。
それと、受け入れ体制の整備も必要かと思います。「お母さん美容師」が本当に必要としている事を、僕ら男性陣がもっと知らないといけないと思いますね。
千葉:
話は変わるのですが、オーナーさんで「美容師を続けながら経営している人」と、「経営に専念している人」の割合はどれ位だと思いますか?
西岡:
だいたい、半々位かなと思います。
カリスマサロンの場合、創業者のパワーに比例すると思ってます。なので「美容師」としてのパワーがあるかどうかが重要でした。
しかし、これからは、カリスマの求心力以外の充実も必要だと考えています。
フレームワークやスキームを使って、会社やサロンとしての「理念やビジョン」をしっかり持ち、それらを元に実行していく。
すなわち、美容師としての「技術やデザイン」ももちろん大切なんですが、そこの上にサロンの「理念やビジョン」が乗っているか!?
あまりも、ビジネスに偏り過ぎてもいけないのですが。
千葉:
そうですね。複数店舗の場合は特に、一番上に「理念やビジョン」があると思います。
サロン単位で考えると、大小関わらず一つのサロンって「店長」で上手くいくかどうかが決まると考えています。
リクルートも、メンバーはそのままでもマネージャーが変われば業績が上がったり下がったりするんです。
店長の能力で必要なのはコアである「技術」。これはあたりまえ。
もう一つは「経営知識・マネジメント」が必要だと考えていて、ここをフォローしてあげる必要がある。
どちらか片方でも、ダメなんですよね。
西岡:
確かにそうですね。
「セルフマネジメント」ができるから店長になる。けど「店舗のマネジメント」の事はわからない。
そういった所は、ホットペッパービューティーアカデミーみたいな所で学べるといいですよね。
千葉:
そうなんです、店長は自分の事はできるんです。
しかし、組織体を上手く動かす時には、「戦略立案」「体制の整備」「プロセス管理」「振り返り」「スタッフ育成」「チームビルディング」というタスクがあって、全て必要なんです。
様々な店舗にヒアリングすると、これがバランス良くできてる店長のサロンは上手くいっています。
人って得意な事に偏りがちなのですが、店長は全てやらなければいけない。
しかも、マネジメントに関するタスクはメンバーには丸投げできない。自分の仕事だとわかってなければいけない。
まずはそれを知ってもらう必要がある。だからこそ、アカデミーでは全ての入門編を作っています。
当然、美容師としての仕事もあるわけなので大変なのですが、しっかり基礎を学ぶ事が重要だと考えています。
西岡:
そうですね。今迄は形だけの店長が多かったと思います。肩書きだけ。
売り上げがあるから店長、人望があるから店長。
千葉:
サッカーで例えると、すごく点をとっていた人がいきなり監督になった、みたいな。監督には監督のセオリーがあるように、店長には店長としてのセオリーがある。セオリーを知らない故に、折れてしまう人が多い。
実は、自分にも過去にそういう経験があります。
戦略が良いので業績は良いんだけど、マネジメントがうまくできず組織コンディションがボロボロで人が辞めていく。
その時は社会人になって初めて、どう頑張っていいかわからなくなりました。空回りしてしまう。モノサシがないから。
先輩・上司に相談してなんとか乗り越えた感じでした 笑
今、ホットペッパービューティーアカデミーで、マネジメントの原理原則を研究していると、なぜうまくいかなかったのか、原因が凄くわかります。
それを当時わかっていたら、違っていたと思います。
そんな状態にいる、オーナーさんや店長さんには是非ホットペッパービューティーアカデミーに来てほしいですね。
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